第5話
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これまでは、何処か絵空事を見るかのような気持ちというか、ふわふわした浮ついた感じでマンション購入を考えていました。
それが、奥さんの言った「人生で一番高い買い物をする」という言葉に感化され、一気に現実に引き戻されました。
私が買おうとしている物は、恐らくは人生で最初で最後の不動産、自動車よりも高いのです。
一生、そこに住み続けることになるであろう、ある意味で人生の終着点になる場所を購入しようというのです。
さて、ヘタレな私はこれから続く大変な状況にまだ気付いていません。
それどころか、初めての内覧でかなりの緊張を持つ事になりました。
これは、私が大変な目に合う直前、マンションの内覧についてのお話しです。
ようやく内覧ができる!!
マンションを紹介している不動産屋に電話をかけると、すぐに繋がりました。
不動産屋(以下、不)「お電話ありがとうございます。〇〇不動産です」
私「あ、あの、××町にある□□マンションなんですけど…」
不「はい、□□マンションですね」
私「こちらに興味がありまして、内覧とかできないかな、と思いまして…」
不「はい、大丈夫ですよ。ご希望の日時などはございますか?」
私「あの、今日でもいいですか?」
不「はい、大丈夫ですよ。担当者が案内しますので…」
・
中略
・
不「では、〇時にマンションの玄関前で担当者がお待ちしています」
私「よ、よろしくお願いします」
こんな感じで話は進みました。
もちろん、この時に電話した不動産屋は、最初に電話したところとは異なります。
正直、最初に電話した不動産屋へは、私がビビり症のせいで怖くてかけられませんでした。
まったく別の不動産屋に電話をして、何とか辿り着きました。
ようやくマンションの内覧ができるのです。
待ち合わせが決まったら、後はワクワクドキドキが止まりません。
こんなに心が躍ったのも、何年ぶりでしょうか。
逸る気持ちを抑えながら、その時間が来るのを待ちました。
何で中古マンションなの?
待ち合わせはマンションの玄関前、15時頃だったと思います。
私と奥さんは、待ち合わせ時間の20分前には、近くで待機していました。
今か今かと待ちわびながら、10分前に玄関前へ歩いて到着すると、そこには如何にも営業マンという風貌の男性が立っていました。
流石に私の方から声をかけると、「お待ちしていました」と名刺をいただきました。
一言二言会話をして、遂にマンション内へ招き入れてもらいました。
ほど良い広さのエントランスからエレベーターに乗り、あまり高くない階層に到着。
そこから廊下を歩き、玄関のドアを開けて部屋の中へ入ります。
キレイに磨かれた廊下、真新しい壁の色、私にとってそれは輝いて見えました。
その時の営業マンとの会話は、ほとんど覚えていません。
この地域の治安についてや、コンビニまでの距離など色々話していましたが、完全に覚えているのはベランダからの景色やお風呂がエコキュート、コンロはIHというオール電化だったという点だけです。
私は生まれてから地方都市の古い一軒家で生まれ、奥さんと付き合っている時に同棲を始めた、古いアパートしか知りません。
玄関がオートロックでセキュリティがセコム、というだけで昇天してしまいました。
この辺りは奥さんの方が冷静だったと思います。
流石、女性は強いですね。
営業マンは「なかなかこの値段で、これだけの物件はないですね」と煽ります。
これ、営業トークですよね。
どんな物件でも、同じようなことを言うのかもしれませんが、その場にいる当事者にとっては、効果はてきめんです。
私は「いいですよね」とちょっと上機嫌で話しました。
ただ、どうしても気になることがあります。
それが「何で、この部屋は中古なんですか?」
そうなんです。
私と奥さんが内覧に訪れたこのマンションは、既に築2年が経過しています。
そして、私が紹介してもらっている部屋は、1500万円の中古物件でした。
俗に言う中古マンションです。
この部屋は、既に誰かが購入している物件であり、それを売りに出しているのです。
都市伝説やオカルトが大好きな私は、何かいわく付きではないのか、と心配していました。
そんな懐疑的な私の質問に対し、できる営業マンは答えました。
「こちらはまだ誰も住んでいない、未入居物件なんですよ。
購入された方は最初は住むつもりだったのですが、息子さんのところに住むことになって、すぐに手放されたんですね。
住んではいない新古ですが、一度購入されている時点で中古扱いになるんです。
まったく手付かずなので、お風呂もトイレも新品のままですよ」
私は思わず「マジで!!」と言ってしまい、奥さんから小突かれました。
築年数は2年は経っていますが、まだ新品同様でしかも新築と比べて安い!これは「キター!」と叫びたくなりますよ。
気になる私はさらに聞きました。
「こちらは、どなたか入居とか考えているんですか?」
すると、できる営業マンは答えます。
「いやー、ひと組だけ考えている方がいまして…」
この話し、恐らくは嘘だと思います。
でも、私はその時に「それはマズい!」と思ってしまうんですよね。
思いっきり、営業マンの策略にハマっています。
普通は冷静に考えると思うのですが…
奥さんを別の部屋に引っ張って行き、「どうする?」と相談を始めました。
私のあまりの行動と言葉にびっくりしたのでしょう。
「もう決めちゃうの?」
と、驚いていました。
私は
「だって、1500万円だよ!すぐに決まっちゃうよ!!」
ちょっと興奮気味に伝えました。
でも、奥さんも余程気に入ったのでしょうね。
「私は、良いと思うよ」
と、賛成してくれたのです。
その言葉を聞いて、私はすぐに営業マンの元へ戻って言いました。
「買います!!!!」
